8.555350J


君は正しく知っていたか、この先駆者の偉大さを!

山田 耕筰
YAMADA, Koscak
1886-1965

序曲ニ長調(世界初録音)*/交響曲ヘ長調「かちどきと平和」/交響詩「暗い扉」/交響詩「曼陀羅の華」 8.555350J(片山杜秀氏による日本語解説書付き)
(録音: 2000年9月(暗い扉・曼陀羅の華) 2001年6月(交響曲)北アイルランド、ベルファスト、アルスター・ホール/2002年1月(序曲) ニュージーランド、ウェリントン、ロワー・ハット・タウン・ホール)
*日本作曲家選輯*

湯浅卓雄指揮/アルスター管弦楽団/ニュージーランド交響楽団*

8.555350J

日本の芸術音楽は何処から来て何処へ行こうとしているのか。全ての始まりを聴くことは、21世紀の歴史を刻もうとする私たちに必須の音楽体験である筈です。日本人初の管弦楽曲で、これが世界初録音になる「序曲ニ長調」こそ、正に感涙の小品。当然、日本人初の交響曲である「かちどきと平和」と併せ、西洋音楽との出会いの感動が凝縮されています。僅か一年後の二つの交響詩では、同じ作曲家とは思えないスタイルの変化がみえます。ここで私たちは、夢と希望に溢れて渡欧し、名前を西欧人的に綴り自らを売り出した若者の足跡の偉大さに、平伏するのです。名前だけは誰でも知っている山田耕筰、その真の姿を今、貴方も確認してみませんか?

<指揮者、湯浅 卓雄氏のコメント>

 山田耕筰は「赤とんぼ」や「からたちの花」「この道」など日本人なら誰でも知っている歌を作った作曲家です。日本は、長い鎖国を終えた明治時代に、初めて本格的に西洋文明を取り入れました。下級武士の家に生まれた耕筰があの明治の環境の中から西洋音楽の作曲家を目指すなどということは、今から想像すると、とてつもない夢であったと思います。当時の日本では作曲の先生すらいないのですから。
 山田は1910年、幸運にも岩崎男爵の援助を得てベルリンに留学します。そのベルリン音楽学校の作曲のクラスで彼が最初に書いたものが「序曲 ニ長調」です。つまり、これこそが事実上日本人が初めて書いたオーケストラの曲となったのでした。山田の帰国後、何度か演奏されましたが、その後楽譜が紛失したこともあって、なかなか演奏の機会に恵まれませんでした。日本最初のオーケストラ曲でありながら、今まで何の録音も存在しなかった「序曲」ですが、今回、ナクソスがオーケストラのパート譜を作り、私たちのこの録音が実現しました。「序曲」はたった3分半ほどの短いもので、まだ模倣の域を越えてないと言えます。しかし、聴けばすぐお判りになるように、驚くほど新鮮で、はつらつとしていて、20代の山田耕筰が夢と希望と野心に燃えて、ベルリンで懸命に西洋の音楽を勉強し、伝統を吸収しようとしている姿が目の当たりに浮かぶような曲です。また、ニュージーランド交響楽団がそれを感じて実に生き生きと演奏しています。 
 日本では、モーツァルトの「フィガロの結婚」やロッシーニの「セビリャの理髪師」等の序曲がコンサートの最初に演奏されることがよくあります。同じ様にこの山田耕筰の「序曲」が、日本の演奏会で普通に何度も演奏されるような日が来た時、初めて日本のオーケストラ独自の時代が来たと言えるのではないでしょうか。 
 私は早速来年1月、枚方の新春コンサート(大阪センチュリー交響楽団)のプログラムに「序曲」を入れることにしました。12月にはスウェーデンでも“ヨーロッパ初演”として演奏する予定です。
 この新しいCDには、「序曲」の次に山田が書いた、これまた日本人最初の「交響曲ヘ長調「かちどきと平和」」、そして、その1年後に書いた2つの交響詩も入っています(アルスター管の演奏)。 
 このCDは、われわれ日本人にとって大きな歴史的意義をもっていると言えるでしょう。これを機会に、是非多くの方に、山田耕筰の偉業をあらためて認識して頂きたいと願っています。

湯浅 卓雄 

大正元年から2年に作曲された日本人初の交響曲や交響詩。メンデルスゾーン、国民楽派、R.シュトラウスの書法すべてを既に山田は完璧に身につけている。西洋の音で自分を表現する喜びがすべての音からあふれている。(岡田暁生 ◎特選盤 朝日新聞 クラシック試聴室)

1912年(大正元年)という時代に、ここまで見事に西欧作曲技法を学び(盗み)取り、微塵も稚拙さや日本臭を感じさせない秀作を書き上げた才能はすごい。しかも、そのわずか1年後に書かれた交響詩《暗い扉》と《曼陀羅の華》では、リヒャルト・シュトラウスばりの豊饒で近代的な色彩のパレットをすら身に付けてしまうわけで、その貪欲さとパワフルさと精力絶倫さに拍手。このシリーズは演奏の質の高さと共に、解説の片山(杜秀)氏によるしっかりした日本音楽史観による力のこもった作家紹介も見事。(吉松隆 音楽の友12月号)

日本人初の交響曲が《かちどきと平和》。古典派から後期ロマン派あたりまでの手法がさまざまに使われた山田耕筰の作曲家としての目覚めに、一種の爽快感さえ味わえる。その翌年に書かれた2つの作品はまったく異なるスタイルで、いわば当時のアヴァンギャルド。たった1年で別人のように変化した彼は、やはり「天才」。(ぶらぁぼ 2003.12月号)

ロマン派から20世紀初頭までの語法を咀嚼し、さらに才能の煌きを加えた作品群。第一次大戦がなく、耕筰がヨーロッパで成功していたら、彼はもっと多くの管弦楽作品やオペラの秀作を残したのではないか。(Varie 2003.12月号)

《曼陀羅の華》は実演でも聴いたことがあるけれど、洋楽黎明期の邦人作品という位置づけを度外視したとしても非常に立派な曲で、もっと大事に扱われるべき存在だとかねがね思っていた。それがこうして新録音で世に出る意義は大きい。(Pipers 2003.12月号)

ヤマダは非常に興味深い「発見」だ。ヤマダの音楽は、日本の音楽をアジア文化の固定観念から離れられないものと考えていた人間にとって、大きな驚きとなるだろう。演奏は第一級、技術的な力強さと音楽的繊細さを兼ね備え、なおかつ録音も素晴らしい。
(Raymond Tuttle, Classical Net)


Sample Track
試聴は、ナクソス・ミュージック・ライブラリをご利用ください!

Copyright NAXOS JAPAN, Inc.